ああ―――

悲鳴が聞こえる

世界の崩壊する音が響く

 

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瓦礫の上に倒れて、アレンはどこからか聞こえてくる物悲しい啜り泣きを聞く。

ふわふわと天から舞い降りてくる白いものは、雪なのかもしれない。灰なのかもしれない。

その儚さは、今消えていく数多の命にも似て―――

そっと手を伸ばし、触れた瞬間に崩れ去っていくそれに、アレンはごめんなさいと擦れた声で呟いた。

 

ごめんなさい

 

守れませんでした

 

許してください

 

あなた達を愛していました

 

選べませんでした

 

だって、あなた達よりも尚、あの人達を愛しているんです

 

「ごめんなさい。僕は、あなた達よりも家族を愛している」

 

握った拳を口に当てて、懺悔の言葉を囁いて。

 

握り締めていた手を開き、その中にあった形を無くしたものを捨てて、アレンは立ち上がった。

 

瓦礫の山の上。

 

眼下に広がる惨状に一時瞳を伏せて、上げた時、その瞳にはそこに待つ愛しい家族が見える。

 

風に翻る彼らの衣は、黒く、深く。

 

今、この身に纏う黒とは異なる黒。

 

それは闇の黒。

 

それは夜の黒。

 

罪を塗り込めしこの黒とは違うのだ。

 

 

ああ

 

私の兄妹達よ

 

私は偽りの衣を脱ぎ捨てて、今還る

 

 

最初であり、最後である一歩を踏み出して、アレンは静かに微笑んだ。

 

 

 

おかえり、と、優しい声がした。

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